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2001年9月
トルコ料理のロケハン期間中、行く先々の店で私が真っ先にしていたことは、まず天井を見上げること。それは、気になってしかたがない、あるものを眺めるためだった。
美しいわ。斬新だわ。どうしよう、欲しくてたまらない。
神戸のトルコ料理店『カフェ・イスタンブール』でのこと。下見のため店に入った私は、シシケバブ(肉の串焼き)とジャジュック(ヨーグルトとキュウリのサラダ)とラク(ブドウの蒸留酒)の注文を終えて、とりあえずふっと一息ついた。次に、座席数や電球の種類を確認するため店内をゆっくりと見回した。そして、天井からぶら下がる"ランプ"を見つけてしまった。
それは黒光りする銅製で、モスクのドームを逆さまにしたような形。細かなイズニック模様がくり抜かれていて、そこから漏れる電球の光が、オレンジの薄いもやを作っている。繊細でエキゾチック。大袈裟に言えば、夕日に輝くブルーモスク。
私はすっかり興奮した。なぜって? それは「ザ・ワールド・オブ・インテリア」の中で、モロッコ生まれのフランス人が、ルイ16世様式の家具に合わせて部屋を飾っていた照明にそっくりだったから。なかなか日本人にはない感性。恥ずかしながら、私はそういう“ヨーロッパ人テイスト”に非常に弱いのだ。そして、そうなると我慢できない私。
『あのランプ、本当に綺麗ですね』。
『あれ、トルコから持ってきました。向こうでは中にロウソクを入れるんです』。
そんな!あのランプにキャンドルを入れたら、それこそ細工模様の隙間から灯りがゆらゆら漏れて、間違いなく、私の部屋は雑誌そのままの幻想的な雰囲気に。私の物欲メーターは完全に振り切った。絶対欲しい。でも、これはお店の照明。どうすればいいの?
『私、来週トルコに仕入れに行きます。よかったら注文されますか』
『ほ、本当ですか?買えるんですか。お幾らぐらいですか。』
『たぶん、1万円ぐらいでしょうか』
『あ、………』
しまった。もうちょっと安いと思っていた。
んんん、ここのところトルコグッズで散財してるからなあ。昨日はトルコの松任谷由美「セゼン・アクス」のCDをまとめ買いして、ほかにトルコ石鹸やスリッパまで買っているし。でも、ランプ、欲しい。だけど、懐が。
『どうしますか?』
『ちょっと、考えます…』
悲しい。
この日、私がなかなかお店を出られなかったのは、お料理が美味しかったせいだけではない。
後日。やっぱり“ランプ”が忘れられない私は、近くの古道具屋で、昭和40年代のウイスキーの景品というランプを買った。800円だった。
後々日。私はそのランプに細工模様を施してみた。だが、その細工はただの穴に終わってしまった。まるで小学生が作る「光るロボットの顔」のようなランプになっていた。しかも、銅に穴をあける工具やらなんやらで、材料費は1万3千円もかかってしまった。
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