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2002年10月 「だからこの仕事はやめれない」
ロケハンで我々が見極めなければならないのは、その店の味や接客のレベルばかりじゃぁありません。ベストな状態で取材をするためには、何よりご主人のお人柄を瞬時に察知することが重要なのであります。
人というのはそれぞれで、同じ説明をしても、「そのとおりに理解してくれる人」もいれば、「まるで理解してくれない人」もいる、さらには「まるで聞いてない人」、「とんでもない勘違いをする人」まで、こちらの意表をついたバリエーションがあるのです。そのうえ、その時の店と店主の情況なども複雑に絡み合って、場合によってはとんでもない結末を迎えることもしばしば。
たとえばこんな勘違い。
「でき立てを撮影したいので、お店に行ってから仕上げてくださいね」と頼んで取材の当日に店を訪ねると、「いまからダシとるから、ちょっと待っててね」と笑顔でラーメンのスープを仕込み出したご主人。結局、後日も一度撮影に行ってきましたけどね、待ってられないから、6時間も。どうやらそのご主人、「ラーメンの取材」とい
うのを、「ラーメンの作り方の取材」と思ったのだとか。う〜む、こちらの説明不足か、あるいは「でき立て」という言葉が災いしたのか。
はたまたこんな出来事も。
スケジュールの問題で、取材は常に2ヵ月ほど先の季節を先取りすることになる。つまり、秋に撮影するのは冬の料理で、春の撮影をするのはまだ真冬なんてことも珍しくないのであります。そこで、我々は「できる限り、本が出る頃にある食材をご用意ください」とお店に頼むことになるのです。ある鍋屋のご主人は、まだ秋のかかりの頃の撮影だというのに、「冬の食材? 大丈夫!大丈夫!」とやけに太っ腹な返事をしてくれる。きっと特別なルートを押さえてるんだな…なんて感心してお店に行くと、そこに登場したのは、なんとロウ細工の鍋セット!!
OH NO〜〜!! 「え?あかん?これで撮影してった雑誌もあったけどなぁ」ってご主人、それはあかんでしょうっ!!それにしても、ロウ細工を撮影してった雑誌ってどこやねん〜!?
そして今回。
ロケハンの際に取材の依頼をすませ、メニューまで決めて、「来週辺りにうかがいますので、取材日時を後日連絡させてもらいます」と伝えて店を出た。2日後、「来週の火曜か水曜はご予定いかがでしょうか?」と電話をしてみると、「あ、うち、来週から盆休みでんねん、1週間。その後でもええかな?」とご主人。OH NO〜〜!! あがんのよ〜再来週じゃ〜〜!! 「なんで?なんで?言うたやん来週って、なんであの時言うてくれへんかったん?なんで?なんで?」と叫びたくなる気持ちを押さえて、急遽、新たな段取りを整え、次の日に取材をすることに。来週と再来週。たった7日間の違いなのだが、これが雑誌のスケジュールにとっては「大違い」となることがあるんですよ、ご主人。この感覚までをもお店の方に理解してもらうのは難しいのでしょうかね。
編集という仕事を続けていけば、こういう事態に出くわすことは段々と少なくなる。それは、過去に様々な人々に出合い、色々な難事に出会っててきたから――つまり、慣れていくからなんですが。それでも、災難がなくなることは決してないんですね。世の中にはそれだけいろんな人がいるから。
ロケハンをする時は、そんな経験をフルに活用して人を見極める。そしてできる限りベストな取材ができるように段取りをする。それでも、時にこんな風に思いがけないことが起こったりするんです、これが。そしてその度に、だからこの仕事はやめれないよね、なんて思ったりもするもんです。人って面白いですよ、ほんとに。(勤))
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