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2002年12月
いつもロケハン後に実感するのは、「本当にいい店ってなんて少ないのだろう」ということ。
探せど探せど、旨し店見つからずと、途方に暮れること毎度なのですが、しかし今回は違った。今月ばかりは「ああ、世間には、こんなにも素晴らしい食材が溢れていたのね」と、しごく感激したのである。
ネタ元は、日頃から鋭い眼力と経済感覚で家庭を守る“主婦スタッフ”さん。店情報が主体の小誌なので、食材ネタは積もりに積っていたのですね。その情報の多さに驚愕したのも束の間、各々の食材の美味しさといったら…。あらためて、「日本って豊かな国だなあ」と深く感心してしまいました。
さて、その中から選りに選られた食材を東奔西走して買い集め、無事、スタジオでの撮影後、編集部へ運び込まれました。
店総数全91軒。1軒につき複数のこともあるので、品数にするとゆうに150はありましょうか。会議デスク一面に広げられた様は、さながら金銀財宝の山。物語なら浦島太郎の竜宮城とヘンゼルとグレーテルのお菓子の家。行事でいうなら正月と盆とクリスマスが一緒にきて、成人式と結婚式を一気にはしごしたかのよう。
入りたてのウブなアルバイトさんは息を呑み、隣の業務部からはこの豪華絢爛な食材を一目見んと人が集ってきたのです。
日頃の苦労の甲斐ありました。神様はこのような贅沢を与えてくれたのです。そう、この食材を皆で取り分けて試食できるのです。
と、さて、ここで質問です。あなたなら、何からいただきますか。生ものなら今すぐ食べられます。乾物ならば自宅へ持ち帰ることもできます。フグあり、カニあり、和牛肉あり。そう!ひとつだけ選んだその食材はまさしく、あなたの性格と体力を現しているのです。まさに“豪華食材心理テスト”。
編集部の事例をご報告いたします。
●毎号、魚特集の担当である女子編集者Kは、日頃の習性でしょうか、フグ刺しに続いてトロ、サーモン、トロと箸をつける。(仕事熱心なのもほどほどに)
●服も男性も渋好みの編集者H。第一手がカマボコという、粋な業を披露。(人生の酸いも甘いも知ってますね、おぬし)
● 若さと体力を誇る麗しき20才女子アルバイトさんは、霜降りサシが見事なローストビーフを1枚、2枚、3枚…、8枚!(ああ、若さの証し。三十路を過ぎた我々は2枚で胃も心も満たされたというのに)
● 編集部に戻るなり、「おい、ハムはどうなってる?」と叫んだのは、無類のハム好き編集長。(ハムに対する思い入れの差で、世代がばれる!?)
● 「タッコはまずっ、生のままで食〜べて?♪、ワサビをちょんとのせて食〜べて?♪、お醤油をちょっとつけて食〜べて?♪、お醤油マヨネーズを絡めて食〜べて?♪」。最近一人暮らしを始めた編集者M。(まさか、自宅でも…)
● お料理パパである男子編集者は、昆布、カツオ節、だし用の魚のアラを、小脇に抱えて嬉しそう。(穿った検証をすると、普段のパパは、家での居場所に困っているのです)
● 甘もの抜きでは5時間ともたない編集者S。花びら餅→薄茶→ういろう→千枚漬け→じょうよ饅頭→白味噌大根漬物→栗きんとん→マカロンタルト→濃茶→柿ザッハトルテ→番茶。「順序が大切」と最後に一言。(利き菓子師の技を見たり)
● 「誰!これちょっとだけかじった人」。どこにでも一人はいる。少しずつ、でも全種類に手をつける、好奇心が言い訳の我欲の強い人。(それが私でした)
本当にこんな贅沢な機会はめったにありませんが、ひとつひとつの食材に込められた生産者の方、販売者の方の思いを、これほど感じられたこともありませんでした。食材が持つ奥深い物語は、ひとつのものとじっくり向き合うことで少しずつ見えてくるのかもしれません。(清)
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