2002年6月 ロケハンはしていないので、沖縄アポ入れ日記

 取材前にこんなに不安になったのは初めてだった。
 取材の段取りなど、まったくもっていつものペースで進められないのである。沖縄相手の場合は。
 「アポ入れ?そんなの必要ないさー」。沖縄通の編集者は皆口々にそう言うが、わたしは編集部きっての段取り魔である。ま、言い換えれば、不意の出来事に大変弱い、小心者ということですね。もし現地に行って、「そんなの聞いてない」と取材を断られでもしたら、少ない日程の中で、しかも不案内の土地ゆえパニックに陥ってしまうこと必至である。
 だから、「突然行くのも失礼だし・・」などと、ひとり言い訳をしながらせっせこいつものようにアポ入れに勤しんだわけだが、これが、どうにもこうにも・・。
 大抵がこんな具合だった。
「大阪の雑誌です。取材にお伺いしたいんですが」「はぁ」
「4月○日にお邪魔してもいいですか」「はぁ」
「何時ごろお伺いしましょうか?」「はぁ・・、いつでも・・」
「・・・・。じゃ、当日行く前に電話しますね! 見本誌もお送りしておきますので、
読んでおいてくださいね!」と、カンペキこちらの一人相撲。
 こんなこともあった。
 本店、支店とたらい回しにされた後、「オーナーの自宅に連絡してください」と言われたので、恐縮しきって自宅に連絡してみると、電話口に出るのはオバァである。ひととおり説明すると、今はオーナーがいないので、夜9時頃にもう一度電話が欲しいとのんびり言う。
 さて、9時頃に連絡してみると、やっぱり電話口はオバァ。しかも「そんな話は初めて聞いたさー」というような口ぶりである。またひととおり説明して「オーナーに変わって欲しい」と言うと、「今は居ない。明日の朝7時ごろならいる」と。
 ならば、と、目覚ましをセットして早起きして電話してみると、出るのはやっぱりいつものオバァである。そして、ふたたび「そんな話は初めて聞いたさー」という口調。で、またまた同じように説明すると、こんどは「わるいけどね、オバァだから難しいことわからないさー」のひと言。
 おぅ、おぅ、なんてこった! 結局、オバァが言うには、直接店に行った方がよいとのこと。・・・って、今までの電話は何やったん!
 というわけで、不安いっぱいでのぞんだ沖縄取材だったが、現地に行けば、そんな気持ちはどこへやら。「あまから手帖? 本届いてたけど、忙しくて読んでないわ」と拍子抜けすることはあっても、基本的には、「どうぞ、どうぞ、好きなように撮ってください」のウェルカムムード。件のオバァの店も、やっぱり話は通ってなかったものの和やかに取材を終えることができた。
 「沖縄取材にアポ入れは必要なし」は、やはり真実だったのだ。沖縄のおおらかな空気の中では、「前もって」や「根回し」なんてややこしいばっかりであんまり意味をなさないのだ。ま、はじめから先輩方のアドバイスを素直に聞いておけばよかったんだけどね。(的)