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2002年7月
ミナミのロケハンも2週間目を過ぎたある夜のこと。私はその日3軒目になる居酒屋で、3度目の「若竹煮」をいただきながら、結構な量になっている日本酒を飲んでいた。深夜1時半。ひと晩に3軒をまわるのは、やはり堪える。さあ、今日はこの辺りで終わりにして…。こっそりロケハンリストを眺めながら、明日はこの店とあの店へ行って…と翌日のスケジュールを練っていた。その時、付き合ってくれていた友人がこう言った。「そう言えば、あなた、明日親知らずを抜くんだったよね」。えっ?そうだったっけ?手帳を見る。すると、こう書いてある。“4時 ○△歯科 親知らず抜く”ああ、ホントだ。忙しくて忘れていた。んんんん?待てよ。親知らずを抜くということは、その日の夜は何も食べれないのではないか。すると明日はロケハンに行けないことになる。ええええっと、そうすると、この店とあの店は次の日になるから、じゃあ、その後に予定している店はその次の次の日になって…。マズイ、日数が足りない。時計を見る。午前2時。リストを見る。今からでも開いている店はある。
さすがはミナミ。これが、ミナミの偉いところ。ようし、こうなったらロケハン続行だ。
先程の友人は帰ってしまった。一人でも決行だ。さあ、行くとしますか。気合入れに、深夜のミナミで孤高な遠吠えをしてみる。「ワオーン」。
4軒目。ワインが楽しめる店。「すみません、いま満席なのでもう少し後からお越しいただけますか」。こんな時間なのに一杯とは。仕方がない、この間に別の店へ行くか。今日何度も往復した心斎橋の通りを、再びひたすら歩く。数えで5軒目。焼鳥の店。戸を開けると、誰もいない。当り前か。午前2時に誰が焼鳥だ。店員もそう思っているのか、全くヤル気がない。半分寝たような顔で突っ立ったまま、オーダーも取りに来ない。3本だけ食べて店を出る。さて、さっきの店に戻りましょうか。午前3時。先程の4軒目。グラスワインと料理を頼む。あんなに食べ続けたにもかかわらず、料理はするすると口に入っていく。ワインは小さな造り手のものもあり、なかなか面白いラインナップ。ただ、前店と同じく、店のスタッフがこの時間はアルバイトに替
わっており、何を聞いても「ちょっと分からないんです…」。残念だ。今日はロケハン不作の日かな。そう分かった瞬間、急に酔いがまわってきた。グラグラグラ。ああ、今夜は報われない夜だった。やっぱり、5軒はキツイ。自分でもよくがんばったと思う。よしよしと、自分を励まして帰宅する。
翌日、編集部で。「私ロケハン記録更新かも、です。5軒ですよ、5軒」。声高らかにアピールする私に編集長のひと言。「Kはいつか一晩に7軒行ったぞ」。ロケハン道は長く厳しいのである。(清)
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