2003年6月 若者とオジサンの距離、縮めます、鉄板焼の不思議な力。

 オジサンに食事に誘われた。私は、現在編集部で事務のアルバイトをしている21歳(女)で、誘ってきたのは、業務部のAさん(典型的日本のオジサン、以下誠に失礼ですがオジサンと表記させて頂きます)。ハッキリ言って普段接点のない私は、行くのをためらってしまう。奢ってもらうのは絶対条件で、行くんだったら、静かなところは絶対嫌だなぁ…。それはオジサンとどんな話をしていいかわからないから。堅苦しい割烹や、形式張ったフレンチの店だとよけいに緊張してシーンとなり、気まずそう。第一、貧乏フリーターである私は、そんな店に行き馴れていないし、同世代とでさえ気が引けてしまう。
 ある程度お金に余裕もあるはずだし、てっきりそんな高級料理店に誘われるとばかり思っていたけれど、オジサンは意外にも鉄板焼の店に行こうと言ってきた。オジサンの行きつけらしく、メニューの中心がお好み焼きで、庶民的な雰囲気のお店だという。鉄板のあるカウンターで、煙を上げながら料理人が目の前で料理を作ってくれる。その過程を見ているだけでも楽しいのだ、とオジサンは言う。お好み焼き屋さんと聞くと、そんなに堅苦しくもなさそうだ。ガヤガヤした雰囲気の中で、ちょっと変わったメニューに驚いたり、歓声を上げたりと、想像するだけで楽しそうだった。そんな雰囲気なら会話も弾みそうだし、私は行ってみることにしたのだった。
オジサンに連れられていったところは、賑わった通りを抜け、細い路地を入ったこぢんまりしたお店。煙が立ちこめる店内には、すでに3組ほどの客が料理を囲みながらいい感じに酔っぱらっている様子。席に着くなりオジサンは、「嫌いなモンないよな?」と言って、馴れた様子でどんどん注文していく。その手際の良さに、しばし唖然としている私に、「はよ食べなどんどん出てくるでぇ」とオジサンは一言。さらに、「お、ねぎ焼き最後の一切れも〜らいっ」と言って、まるで少年のように顔をクシャクシャにしておいしそうにねぎ焼きを頬張っている。「あれ?この人って、こんな人だったっけ?」普段あまり見せることのない無邪気なオジサンの表情に、私は驚きを隠せなかった。
気がつくと、私もかなり饒舌になり、すっかりオジサンと打ち解けていた。二人の間にあった見えない壁も、少しずつなくなってきたようにも思う。よく、失敗談なんかを聞くと、その相手に気を許す、と言われるが、それは相手の人間っぽい部分が見えるからだろう。私は、鉄板焼を囲みながら、オジサンのお茶目さと、意外な一面を見て、気を許してしまったのではないかしら。静かな店で、日本酒をチビチビ…なんてやっていたら、きっと今頃説教なんかされていたところだ。このガヤガヤワイワイ感が、もしかして、緊張の糸を解いてくれるのかなぁ。人の気持ちをほぐしてくれる鉄板焼にちょっとハマってしまいそう。あまり親しくない相手でも、その人との距離、縮まるのではないかしら。きっと素直に来てよかったと思えるはず。鉄板焼だったら、また行ってもいいかな。今度は私が誘いますね、オジサン。 (HAGI)