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2003年11月 〜実録〜3000円台コースの有象無象〜
締切間際の9月のある日、入稿作業の傍らで、特集掲載枠の最後の1軒を探す作業は続いていました。そこへ京都のある調査員から情報が。
調:「串焼きの店で、ごっつおしゃれで、もと●●の●●をしてはったシェフが●●なことしてはる。塩の打ち方、タレ使い、もう絶品。3000円台でコースもあったで」
編:「いいじゃないすか。さっそくライターさんと下見に行ってきます」
調:「けど好き嫌いはっきり分かれる店や。いっしょに行ったツレは2度と行かん言うとった」
編:「もし取材となれば、そのへんもしっかり書き込みましょう」
というわけで、市内某所のその店へ出掛けたのです。
店は大通りから路地を奥まで入ったところ。石畳のアプローチには打ち水がしてあり、あんどんも灯っていい感じの夕暮れどきです。予約の旨を告げると、シェフとおぼしき熟年男性が出迎えてくれ、丁寧に席へ案内してくれました。店内カウンターは熟年夫婦、OL同士、若い夫婦とその両親といったところで、おとながゆったり食事を楽しむ、いい雰囲気です。いや、いい雰囲気でした、ここまでは。
主:「きょうはどちらから?」
編:「大阪です。京都での仕事帰りに来ました。彼女(ライターさん)は京都でして」
主:「そうですか。彼女にはせいぜいご馳走してあげんと。お決まりのコースはいかがです。2000円からありますが、おすすめは5000円からのおまかせで…」
編:「3500円の2つお願いします(だって3000円台のコース特集だし)」
主:「……承知しました(なんとなく不機嫌)」
ここからが主のステージの始まりでした。客のコースの流れがたまたま重なり、焼き場はてんてこ舞いになってきています。
主:「ちょっと、彼女、おねえさん!(バイトの女の子)、ここきれいにして、拭いて、お箸並べて、あ〜もう、ワシがやる!」
主:「え〜もう、あなたはもういいから、あっちいって、あっち」
主:「彼、そこの!(若い従業員)これ焼けたらそこのたれかけて、ささっと出して」
従業員はせめて名前で呼んで欲しいと思っているでしょう。怒声は従業員のだれかれかまわず襲いかかります。落ち着いて流れていた時間は一瞬にして消え去り、なにやら客全員がそわそわしだしました。
主:「うちでは食べ終えた器を、お客様にお返しいただいております。食べ終えられたら、ここ(カウンター上)へお戻しいただきますよう、お手数ですが」
主:「うちではチーズをブレンドしてこのブレッドとお出ししています。これが美味しいんですよ。よろしければお召し上がりください」
ともあれコースが始まり、私はそのチーズとパンに合わせてグラスワインの白を飲んでいました。軽くフルーティーなワインで、上質の塩で焼いた鶏肉にぴったりと合っていました。しかし、空いたワイングラスをカウンター上に戻し、今度はグラスの赤ワインを頼んだ際、そのグラスにワインが注がれてしまったのです。主が目を離した瞬間でした。ワインを注いでくれた2番手さん、新しいグラスと勘違いしたのでしょう。
編:「このグラス、いままで白ワイン飲んでたグラスなんですが…」
店:「エッ? ああ新しいグラスやと思って」
「失礼しました」のひと言がありません。それどころか目の前で赤ワインは流しに捨てられ、新しいグラスで乱暴にワインを注ぎ直してくれました。
なんだか悲しくなってきたところで、串の皿は次々と運ばれてきます。これが、また憎たらしいことに、調査員の話通り、ひと口ごとに広がる独自の美味しさ。食べ始めの悲しいアクシデントを打ち消すほどでした……お勘定までは。
さて、先ほどから姿が見えず静かでいいなと思っていたら、主は、キャッシャーで接客中でした。
主:「おおきに、お口に合いましたかどうか。12000円です」
編:「え?(3500円×2でグラスワイン2杯にライターさんの飲んでたお茶はサービスやったと思うけど…)」
主:「明細と領収書です」
編:「………(あらかじめ明細があるとは…なになに、!!!)」
明細には、サービスと思っていたお茶やチーズの価格がはっきりと記入されておりました。しかも消費税をかけたうえで、サービス料10%が加わっています。食べ終えた器を客に返却させておいて、ほかにサービスというサービスを受けた覚えはありません。しかしサービス料を請求する。さらに消費税にまでサービス料がかかるとは知りませんでした。
噴飯です。料理は、美味しいのになぁ…。好き嫌いが分かれるという調査員の言葉を思い出し、好きな人はこの店に通うんだろう、と、クレームをつける気力はなえていました。
今回の特集は「ひと通り食べて、軽く飲んで5000円で収まる」ところに主眼をおいていました。取材でお世話になった店は、価格も料理も記事通りなんですけれども、加えるならば3000円台コースで「一所懸命、できる限り客を喜ばせよう」というスピリットあふれる店主ばかりです。
こちらの店? もちろん弊誌には載っておりません。(誠)
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