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2004年11月
こんな仕事をしていて残念なのだが、アルコールを受けつけない体質だ。
「酒を飲みながら話のできん奴は信用せん!」昔、ひそかに心を寄せていた先輩に冷たく言われ傷ついたことがある。努力はしたが、体質なのだから致し方ない。食べることはともかく、お酒絡みの仕事は無理かな〜と思っていたところ、本誌11月号で割り振られたのは第1特集「居心地のいい酒処」。
「全然飲めないんですが」と遠慮がちにS副編集長に申し出るも「あ、そう」とあっさり一蹴された。困ったなあと思っているうちに、怒濤のロケハン週間が始まった。夜な夜な「酒処」へ出かけるロケハンな毎日。
ど演歌流れる居酒屋から、ちょっとこじゃれたダイニングバーや凛とした和の佇まいの店に、下町商店街の立ち飲みまで。2週間、ほぼ毎夜2〜3軒をはしごする日々続いた。飲めない酒を飲む、地獄のようなロケハンを想像していたのに、始まってみればこれが、意外にも楽しい。
料理は基本的に酒の肴なので、ひと皿の量はそんなに多くない。一軒でお腹いっぱい食べなくても、その店の美味しいものを少しずつ、つまめる。軽くあぶった香りのいい干物や、自家製の豆腐、旬魚のお造り、店ごとに違う味わいのだし巻き。いちぢくの天ぷらとか、食用ほうずきなんて珍しいものまで。タイプの違う店を選んでまわったこともあって、出合った美味は書ききれないほど。一般に食事目的の店と違い、店主や調理をする店のスタッフとの距離が近く、気軽に話が聞けたり、軽口をたたいたりするのも酒処の良さだと気づく。さらに同行者(編集部員だったり、ライターさんだったり)ともお酒がはいるせいか、いつも以上に会話が弾み、今まで知らなかった相手の人柄が見えたりもした。こうなると、地獄どころか、いつものロケハンより楽しいくらい。なんだか夜が来るのが待ち遠しいとさえ思えてきて、ちょっと前の「5時から男」みたいだ。
ある日の同伴者は酒豪と名高いライターのDさん。気がついたら、いつのまにやら、封印していた人生のあれやこれやをぺらぺらとしゃべっていた。「Kちゃんってそうだったんや〜」と冷静に受け止めてくれるD姉さんの優しげな目に誘われるように、さらにしゃべる。頭のどこかで「と、止まらん」と焦りつつも、滅多な人には話さない秘密を吐き出して、ちょっと気分がよくなり普段ならコップ1杯も飲めないはずのビールがすでに3杯。この日はさすがに、電車で立ったまま気を失った。(自宅近くの駅で目が覚めましたが…)
今回取材に御協力頂いた店々はそんな楽しい(!)日々の中で探し当てた、まさに「飲めない」人にも「居心地のいい酒処」ばかり。白状すると、何軒かは取材後も個人的に足を運んでいる。酒量は多くないが、「1人で飲む」という、以前には考えられなかったことにも、ちょっとはまりつつある。思いがけない担当割当てをしてくれた上司に感謝しつつ、次の「酒処」特集の際には立候補しようかなと思ったりしている。(衣)
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