2005年1月
  皆さま、明けましておめでとうございます。新春特大号は「関西味の遺産」と題したお祭り号。古くからの名店が集結し、ロケハン回数も少なかったけれど、私が担当した粉もんページのロケハンで、強烈な一軒に出合ったのです。
 目的のお好み焼き屋の店先。ここは割烹? と思わせるような店構え。一人なら引き返してしまいそうな雰囲気だけど、男性スタッフにお供願っていたので、入店。他にお客さんはおらず、カウンターの中に初老のご婦人がひとり。「お好み焼き屋のおばちゃん」とではなく、「ママ」と呼びたくなる佇まいです。しかも、その背にはヘネシーの瓶がずらり。鉄板がなければスナックという感じ。
 モジモジしながらまずはビールとスジ野菜を注文。ママは手際よく準備をしながら「どっから来たの?」なんて質問を投げかけてきます。こちらの素性がバレないようにお茶を濁しながらいろいろと話していたら、ママの興が乗ってきた! 同行の男性をまじまじ見ながら「アンタ若い頃、ようけごんた(やんちゃ)したやろ? でも出世するわ」と言いつつ、「会社の部下にはたまには奢ってやらなアカン!」「仕事だけじゃなくて遊びも大切や!」と説教が始まりました。確かにママの言うことは的を射ています。ふんふんと聞いていると、挙げ句、「アンタの舞台は日本だけやないで! アメリカだって行ける、世界で成功できる男や!」と言い出してしました。そ、それは…と思いつつ、連れの男性の横顔をちらりと見ると、むむ? まんざらでもなさそう…。
「アンタの舞台は世界や!」と言われた彼は、領収書を切ることも割り勘にすることもできず、自腹でスジ野菜1人前、お好み焼き2枚、興奮してガバガバ飲んだ瓶ビール5本分の代金を支払いました。赤い顔はビールのせいか、ママの言葉に鼓舞されたのか。
 スジ野菜もお好み焼きも美味しかったし、オモシロイ店だとは思ったけれど、やはり今回は取材店から外させて頂きました。誌面に落とせる収穫はなかったけど、同行の彼は人生の道標となるママの言葉を胸に、もしかしたら何年後かはアメリカン・ドリーマーになっているかも…ってそんなわけないか!(白)