2005年4月
 神戸特集のロケハンをするたびに、神戸っ子気質の特殊性を感じる。ちなみに“神戸っ子”とは、神戸人が自分たちを呼ぶ時によく使う言葉で、“神戸っ子”である最大のポイントは、年齢でも性別でも生まれ育ちでもなく、「いかに神戸が好きであるか」ということである。
 大好きな街のことですもの、神戸っ子がやたらと地元に詳しいのは当然のこと。そして何より口コミがすごい。「来月までに、イタリアンの店が近くに3軒オープンするらしい」「あの工事中の建物は、ケーキ屋さんになるらしい」など、「そんなん不動産屋さんしか知らへんのとちゃうん?」という話を、フツーの奥さま方が、ランチを食べながら披露している。
 これだけ情報があるなら、店をわざわざ探す必要もなく、ロケハンも簡単…と思うのだが、そうもいかないのが、神戸っ子気質のやっかいなところ。
 確かに、「次、神戸特集やります!」と声をかけると、新しい店情報がジャンジャカ集まる。でも、その詳細を聞こうとすると、「店の前は何回も通ってるけど、まだ行ってない」「気になっているけど、噂を聞かへんし…」と、トーンダウンする。そう、神戸っ子は実に堅実。新しい店情報は知っていても、すぐには飛びつかない。信頼できる誰かが「あの店はいいよ」と言うまで、待っているのだ。
 だから、その集まった情報をかたっぱしからロケハンしなければならなくなる。結構な数なので、日数がかかる。しかもロケハン途中で「新しい店見つけた!なんか雰囲気よさそう」と更なる情報も入ってくるので、なかなか終わらない。結局、取材ギリギリまでロケハンを重ねる日々。今回は2ヶ月たっぷりロケハンにかかった。
 さて、先程も述べたが、神戸っ子の口コミはすごい。特に「あの店はいい」という噂の威力は絶大だ。今回のロケハンで出合った店のことを「あそこのハム、特にロースハムの美味しさにびっくり。レバーペーストも最高!」と、会う人会う人に喋っていたら、2週間ぐらいのうちに、20人ぐらいの人から「行ってきた!」「ロースハムもいいけど、煮込み用ソーセージも使える!」などの反応が返ってきてびっくりした。正直、本が出るころには(小誌は特に制作期間が長いので)神戸中の人が知っていて、目新しさがなくなってしまうのではと心配になったくらいだ。
 今回の特集は、そんな神戸っ子の皆さまの心に響くであろう26軒をラインナップ。「今度のあまから手帖、いい店たくさん載ってるよ」と口コミで広めていただけることを願って。(的)