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2006年7月
神戸市民なら密かに、一度は住みたいと野望を抱く阪神間の街。私もご多分に漏れず、「六甲道」「甲南山手」「芦屋」、その響きに子供の頃から憧れ続けてきた一人。7月号の第2特集、「阪神間・宝塚」の担当に決まったときは、心の中で小さくガッツポーズでした。素敵なパン屋さんにパティスリー、一軒家フレンチに会社のお金で入りびたり…と不謹慎な想像にほくそ笑む私。かくしてセレブなお屋敷街での、放浪の日々が始まりました。
阪神間の特徴として一つには、オーナーさんがご自宅や別宅で人知れず営む隠れ家店の存在が挙げられます。が、そのお店探しでまず困ったのは「情報がない!」。利益度外視、オーナーさんの趣味の延長であったりする隠れ家店はまず広告を出しません。頼りはスタッフからのクチコミ情報、あとは地道な街歩きのみ。少しでも確実な情報を出そうと、お休みの日にバイクを飛ばして下見に行ってくれたカメラマンさんもいました。正確な地図もないので、ロケハンをするにもひと苦労。目指すお店は立派な邸宅の立ち並ぶ、閑静な住宅街の一軒家。暗がりの中家々の表札を覗いて回る私とライターさんはすでに、不審者の一歩手前。足を棒にして歩き続け、やっとの思いでたどり着いた和食店の軒先に出迎えのご主人の姿を見たときは、思わず「ただいま〜!」と叫んで駆け寄りたくなる衝動に駆られました。
さてそんな冒険の末、迎え入れられた一軒の和食店。本当にいいものを出すお店というのは、得てして一歩足を踏み入れただけで、ある直感が胸の動悸を呼び起こすもの。ここでもスリッパに履き替え、ぷうんと木の香の漂う部屋に通された瞬間、アドレナリンが一気に放出されるのが分かりました。古民家風の造りを生かした空間には、気になる器や掛け軸、窓の外にはご主人自作の庭まで見えます。このへんでもう、ワクワクしすぎて「すごい」「素敵」「旅館みたい」と素人丸出しな感嘆詞しか出てきません。もちろん、続いて出されたお料理もすべて独特の個性にあふれ、興趣を誘うここにしかない皿ばかり。食後のお茶を飲み、香りのよいお手ふきで口を拭いながら、ああ、ここが旅館なら…このまま泊まって帰りたい…とわがままを言いたくなるほど、心地のよい空間なのでした。
奇しくも「阪神間」の裏、第1特集は「空間特集」。そっちに推薦してもよかったなぁとつらつら思いつつ、でもこんな心地よさも阪神間の特徴だよなぁと思い当たりました。思い返せば、私が今回ロケハンも含めて巡った20軒中、玄関で靴を脱ぎ、スリッパで上がるお店が約2割。そこはやっぱり日本人、靴を脱いで心をゆるめれば、美味しいものを受け入れる準備も自然と整うというもの。そんな潤沢な「おもてなし精神」が、阪神間のスリッパ比率に表れているのかも…などとは後づけの考察ながら、一つの見方と言えるのではないでしょうか。さらには今回掲げた「馴染みになりたい店」のコンセプト通り、普段着でふらりと立ち寄れるお店もたくさん見つけてきました。中心街のゴージャスな大バコダイニングにはない、飾らない楽しみ方が見つかるはず。みなさんもまずは一度、阪神間・宝塚を気軽にぶらぶらしてみてください。素敵なお店を見つけたら、ぜひご一報を!(篠)
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