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2006年10月
あれは、編集に携わり始めてからまだ間もない、約1年前。和食特集のロケハンでは、“ちゃんとした”日本料理なんて食べ慣れていなかった私は終始ガチガチ、緊張しっぱなしでした。こっそり、食べ方のマナーブックを立ち読みして、へ〜そうなんだ〜と家でお箸を持って練習してみたり。今となっては、いい経験です。
半年ほど前の寿司特集ロケハンといえば、生魚の食べ過ぎで夜中に腹痛を起こして苦しかった…。「もう寿司は絶対イラン!」て寿司を恨みましたが、今思えば、なんて贅沢な叫びだったのかしら。大変だったはずなのに、「ネタ+シャリ=∞(無限大)」の世界を初めて体感して、気づけば前より寿司好きになってしまっていました。おかげで舌は肥えてしまって、これからが心配なのですが…。
その直後のパン特集ロケハンは、寿司から一転、“大好きなパンを好きなだけ食べられる〜”と、ロケハンが始まる随分前からウホウホしていたのを思い出します。でもいざスタートして調子にのって食べていたら、“小麦粉パワー”でお腹がパンパンに膨らんで、鏡でそれを見たときは「私の女人生が終わった…」と落胆しました。でもまぁ、それも束の間。やっぱり美味しいものは美味しい!おかげで、今もプライベートで通うほどお気に入りのパン屋さんが見つかって、やっぱり幸せです。
…という感じで、今までの特集を振り返ってみますと、当然ながら食卓シーンや食べものの記憶が鮮烈に甦ってきます。でも、なぜか、奈良特集に限ってはそうではないのが不思議。水分をガブガブ摂っては、その分だけ汗をだらだら流して(ロケハンしていた時期は、ちょうど今から2カ月前の夏真っ盛りでした!)、奈良をあちこち徘徊。そんな奈良ロケハンのことを思い出したとき、私の頭に浮かぶのは食べものではなく、「奈良の人たち」なんです。
例えば…。緊張しつつ一人でドアを開けた、ちょっと高そうなあの炭火焼の店。ランチタイムもとっくに過ぎていたこともあって、店内にはお客さんが誰もいませんでした。それどころか、よく見るとご主人とスタッフの方がランチ中(笑)。「なんか急に炭火焼が食べたくなって」なんて答える怪しい私に、ご主人はあたたたく対応してくださいました。本当は2人からしか注文できない炭火焼セットを、1人分用にアレンジしてくださったおかげで、無事ロケハン任務も完了。しかも貸し切り状態だったからか、ご主人じきじきに“焼き方指導”まで。奈良の美味しい店も教えてくださって助かりました。
ほかには、市内からちょっと外れた場所にある癒し系のカフェ。私と同年代くらいの女性たちが店を切り盛りしていたのですが、可愛らしい空間で、丁寧に作った食べものを出している店でした。時間の流れる速度って、場所によって、人によって、こんなに違うんだ…と衝撃を受けました。心に余裕を持って、もっと丁寧に生きようと反省させられたのを思い出します。同じ女性として素敵だなと思った、お二人のあのキラキラした笑顔は忘れません。
ああ、それからそれから、定年後のおじ様が経営しているあの店も印象的でした。ランチを一人で食べていたら、私の食べるあまりのスピードに驚いてか「ゆっくり食べていいんやで」って言われたっけ(笑)。世間によく言われる、「早食い=大食い=肥満」の方程式に自分が見事に当てはまっていることに愕然といたしました。美味しいものは早く食べたいと気が逸りますが、人間、ゆっくりご飯を食べる心のゆとりも大切ですよね。店で流れていたヒーリング音楽のCD、思わずレジで買って帰ってしまいました。
取材のときだってそうです。ボケとツッコミが激しいラブラブ夫婦に、隣のご自宅で飼っているウサギにメロメロの強面シェフ、赤ちゃんのいる大きなお腹をやさしくさすりながら対応してくださった穏やかな奥さん…。思い出すのは、奈良の人が醸し出すゆったりしたオーラばかり。
自ずとタイトルも「ゆるり寛ぐ奈良の店」となったわけですが、これこそが古の都、奈良の魅力なのかもしれません。京阪神にも美味しいものは溢れているけれど、ちょっと足をのばしてでも“触れたい何か”が奈良にはあるようです。みなさんもぜひ足を運んでくださいね!(麻)
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